引越し作業員の目に見えないバトル
結論から言いますと『どちらが階段で上を行くか』でバトルをしてます。
重量物を階段で上げる時はたいていベテランが上に行きます。
何故かと言いますと『舵取り』が必要だからです。
この舵取りは経験と体力が必要になります。
階段の形状に合わせて物立てたり寝かしたり指示したりといろいろ面倒なのです。
立てたり寝かしたりする際も太もも付近からバイザイする形まで物を上げなければならないので普段の生活では使わない筋肉も必要になります。
しかもそれを後ろ歩きでやらないといけません。
もちろんその間はブレは許されません。
「やること多すぎません?」
そうです。多いんです。
下を持つ人間は言ってしまえばパワーだけあればなんとかなるので同じような作業見えても上と下では非常に『やること』の格差があります。
通常ベテランと新人のコンビでは必ず上にベテランが入ります。
これはもう荷物を安全に運ぶ為なので仕方のないことです。
ですが力量が同じぐらいのベテラン作業員同士ならそうはいきません。
両方ベテランならどちらが上でも結果は確実なのですが、人間やっぱり楽な方を選ぶんですね。
その楽な方を巡ってバトルが始まります。
バトルは対象の重量物の梱包の段階から勝負が始まってます。
もちろんお客さんのいる現場なので言葉と表情にはだしませんがバトルしてます。
サイレントバトルです。
物を運ぶ導線の形を事前に理解して、作業をしながらいかに自然でベストのポジショニングができるかが勝負の分かれ目になります。
この自然にできるってのが重要なのです。
「上をやって」と言葉にすれば簡単な話なのですが、これは作業員からしてみれば敗北宣言に等しい言葉なのです。
ダメ作業員の烙印を押されるので引越し屋のプライドが許しません。
なのでいかに自然にその形に行くかが重要になります。
ちなみに私はこのあたりの駆け引きは得意ですね。
長年そればかりを意識して作業を経験していたらある時その技を習得してる事に気付きました。
相手からしたら「何でいつも気付いたらオレが上なんだろう??」と負けた理由が理解できてないはずです。
経験、つまり『時間』使った技になります。
ちなみに私はこの技を『THEワールド』と呼んでます。
このバトルは現場の楽しみの1つです。
以上、作業員の目には見えないくだらないバトルの話でした!
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